昭和40年代に、書道界では芸術性の高い書が注目を浴び、ちょど現在のような派手なパフォーマンスやタイポグラフィック系の流行があったらしい。
そのような風潮の中、一文字一文字の成り立ちや形態をじっくり吟味して、日本の文字の本来の美しさをきちんと学び伝えようとする文部省の役人が大貫思水氏であった。
今では「書道」の授業は選択式になっているようだが、当時は必修科目だった。
その小学校の書道のお手本を監修したのが大貫思水氏である。
だから還暦過ぎの人なら、その端麗な楷書を一瞥したとたん、墨の香りとともに書道の授業を思い起こすことになるかもしれない。
氏は日本の書をアーティスティックにデフォルメしてもてはやされる当時の風潮を憂いて、本来の正しく美しい書きぶりを学び伝えるよう門下生とともに「日本書学館」を設立する。
その思水の信念と書を愛してやまなかった添田米彦氏が書道実用書の出版社、知道出版を立ち上げたのである。
大貫氏監修のもと添田氏が満を持して刊行したのが『書道技法講座』楷書編、行書編、草書編、かな編、条幅と作品である。
大貫思水亡き後も、その書のファンを多く集まり、団体の活動は今も続いている。
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