大手取次の赤字や書店減少の報道により、出版業界の厳しい現実を突きつけられる。これから本は一体どうなってしまうのか。
リニューアルした三省堂書店にふらっと立ち寄るのが昼休みの楽しみの一つだ。
一階の実用書エリアを当てもなく物色していると、何かに追われるような、焦るような気持ちになる。
「元トップセールスの○○」「成功者の○○」「一流の○○」
角ばった言葉たちに背中をじっと見つめられる。「お前ももっと努力しろ———」
パラパラとめくった時の紙の手触り。ずっと置いておきたくなる綺麗な装丁。インクと紙の匂い。
前から思っていたけど、本の「なんかいいなぁ」ってなる感じとビジネスの筋肉質な雰囲気は合わない。
文芸エリアに逃げると、途端に息が吸いやすくなる。
友達に勧められた本、気になっていた本、好きな作家さんの本。じっくりと自分の心と向き合って、「読みたい」と思った本を手に取る。
そう、本屋ってこういう時間を自分に与えてくれる。今の自分がどんなものに惹かれるのか。どんな言葉が心に沁み込むのか。
出版不況について、一人の本好きとして色々と思い巡らすことがある。
その中で、本は市場が大きくなりすぎてしまったのではないか、と感じたりする。
時代の流れに沿って競争が苛烈になり、大きい言葉を使わないと埋もれてしまうようになった。大量に並ぶ本たちが声高々に主張を訴えかけてくる。
所狭しと敷き詰められる書籍、インパクトの強い言葉たち、目を引くデザイン。押し寄せる情報量に胃もたれしてしまう。
本は静かなメディアだと思う。
一人でじっくりと言葉と向き合い、大切に心に閉まっていく。
そんな本ならではの良さを第一に考えた業界になってほしいと願う。
そのために何ができるか、一編集者として精一杯取り組んでいきたい。
最後に、夏目漱石の『こころ』からの引用文を。
「私は冷やかな頭で新しい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べるほうが生きていると信じています。血の力で体が動くからです。言葉が空気に波動を伝えるばかりでなく、もっと強い物にもっと強く働きかけることができるからです。」
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