寒くて気づくと猫背になっている今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
先日、東京都江東区に事務所を構える、古本屋くまねこ堂様を訪問いたしました。
くまねこ堂様の方でも、ブログを書いていただきました!
くまねこ堂様ブログ「知道出版様、ご来訪!」
↓↓↓
https://www.kumanekodou.com/tayori/28252/
くまねこ堂様古書サイト:https://www.kumanekodou.com/
くまねこ堂様骨董サイト:https://www.kumaneko-antique.com/
上記のHPを見るとわかるように、くまねこ堂様は、古本やDVD・CDの他にも、古道具や骨董品、アクセサリー、切手、万年筆、レコードや古いおもちゃなど幅広い品物を買取しているとのことです。
持込・出張・宅配の方法で買取を行っており、出張の場合はお客様のお家をまるごと見て買取れるものを提案する、また買取と併せて家の片付けを行うなど、様々な依頼に可能な限り対応しています。
そして買取った品物は市場、もしくはネット上で売っていらっしゃいます。実店舗のないネット専門店です。
このようなくまねこ堂様のあり方は、一般的な方がイメージする「古本屋さん」とはなかなか違うかもしれません。
しかしくまねこ堂様が現在の形となるには、理由がありました。そしてそれは古本を巡る状況を、我々に教えてくれます。
まず、どうしてくまねこ堂様はネット専門店となったのでしょう?
店主の渡辺隆之様に伺うと、実店舗を出すメリットを感じられなくなったからとのことでした。
渡辺様は21歳で古本屋での修行を始め、独立し実店舗を構えたこともあったそうです。
しかしネットでの取引が優位になっていく状況の中で、訪れる少数のお客様のために実店舗を維持していくのは、経費なども考えるとなかなか厳しいものがありました。
土地や建物を借りながら古本屋を運営していくのは、お金の面でかなりシビアな判断が必要な部分もあるでしょう。
消費者の中で「ネットでポチる」という言葉が広まるなら、それに古本屋さんも対応していかなければならなかったのです。
街で見掛ける実店舗を維持している古本屋さんも、ネット販売を同時に行っているところも多いですよね。
我々の買物の変化が、古本屋さんのあり方を変えていたのです。
そしてネット専門を選択した故に、くまねこ堂様は江東区に事務所を置きました。
ネット専門とするならば、実店舗では考慮しなければならない棚のレイアウトなどから自由になるので、様々な品物をたくさん買取り、処理していくことで優位に立てます。
他社が在庫のない時に物があれば買ってもらえるということになるので、広い倉庫を持ち、品物の量を扱えるようにすることが大切なのです。
なのでくまねこ堂様は神保町などではなく、江東区で駅からやや離れたところに、事務所と倉庫を構えました。
また、くまねこ堂様はなぜ古本だけでなく古道具や骨董品も扱い、依頼によっては片付けまで行うのでしょうか?
店主の渡辺様は古本屋としてスタートしたものの、早い段階で「古本だけを扱っていては食べていけなくなるかもしれない」という危機感を覚え、骨董品なども鑑定できるように勉強をなさったそうです。
確かにそれまで本に依存していた情報収集がネットで充分可能になってしまったり、電子書籍が誕生したり、暇潰しの手段が多様化するなどもあって、人々が紙の本を読む機会はどんどん減っています。
その中で限られた古本の消費者を、たくさんの古本屋さんが奪い合うということにもなっています。
くまねこ堂様の守備範囲であった骨董品や古道具・アクセサリー等の買取についても、金価格の高騰も相まって現在貴金属などの買取業者が増えることにより、競争相手が多いのです。
そこでくまねこ堂様では、元々行っていた骨董品や道具などの買取に加え、片付けなども可能な限り積極的に行い、この状況を乗り越えていこうとしています。
街の古本屋さんでは、カフェを併設したりライブを行うなどしているところも多くあるようですが、それは店主の方の場づくりであると同時に、本の売り買い以外の収入という意味でその古本屋さんを支えているはずです。
古本屋さんでも、本だけに頼って経営することはできない場合もある現在の状況があるのです。
渡辺様によれば、昨今の運送費の改定は古本屋にも大きな影響があるとのことでした。
宅配買取に活路を見出していた古本屋さんは、これまでのやり方の再考を迫られることもあるかもしれません。
古本屋さんの扱う品物も変化していくかもしれないと、渡辺様はお話されていました。
例えば、「事前にお客様に売りたい本のISBNを知らせてもらう。その中から業者側がほしい本をセレクトする。そしてその業者側が選んだ本だけをお客様に送ってもらう。」というやり方を必要に応じてとることで、宅配買取を中心に据えながら盤石な経営をしている業者もあるとのことです。
どう利益を出していくか、知恵を絞っていくことがますます求められていくのでしょう。
それに加え、良い品物は都市に集中しているという現状があります。
各地の市場の様子を見聞きしている渡辺様の印象では、神田や関西などの主要都市の古本市場以外で良い古本を入手するのは、なかなか難しいのではないかということでした。
都市に品物が集中するという現象は、古本世界にもあるのだということ、驚きました。
運送費や旅費等の値上げにより、ますます都市の中で品物の巡りが完結してしまいがちになることも考えられます。
そうして地方の古本屋さんが衰退してしまうと、その地方在住の方が本を売ろうとしてもなかなかうまくいかず、結果貴重な本が捨てられてしまうことにもなるでしょう。
ただ、全体として、最近はなかなか良い本が見当たらないというのが渡辺様の本音です。
それには新刊書籍の現状が関わっていると、渡辺様は考えています。
新刊書籍で売れるものが少ないと、必然的に古本市場に行き着くものも減ります。
新刊市場の活気のなさは、そのまま古本市場の停滞に繋がっているのです。
ますます、古本屋さんにとっては難しい状況となっているのですね。
くまねこ堂店主渡辺様は、古本を巡る現状をどうお考えなのでしょうか。お伺いすると、意外にも希望のあるお答えがありました。
渡辺様は、古本はもっと早く「駄目」になると思っていたが、意外と持っているという印象をお持ちだそうです。
そして紙の本には紙の本の重要な役割があると、渡辺様は考えています。
それは、情報を残すという役割です。
ネットの情報は、それが修正された場合、前情報にアクセスすることは困難になります。電子書籍も同様です。
紙の書籍は、一度印刷され流通したならば変えることはできません。増刷時に直しても、既に読み手に渡った前の版の情報まで修正できないのです。
これは、一度書いたことは「なかったこと」にはできないということです。
ネット上の記事、また電子書籍内の情報は、本人の、あるいは誰かの不都合により「なかったこと」にすることができます。
それにより、大衆の記憶から特定の出来事や発言を消すこともできるかもしれません。
しかし、ある人が紙の本を保持するなら、その紙の本に印刷されたことは消すことができません。
ネット上ではあらゆることが上書きされ、また生成と消滅が繰り返されますが、紙の本はそうではありません。
紙の本は、情報が錯綜する現代において、自分で情報を収集・吟味し、考えたいと思う人には貴重です。
その紙の本の重要性を意識する人が一定数いる限りは、まだ紙の本は維持されていくのでしょう。そう信じたいです。
その紙の本を扱う者としての意識を持ちながら、古本屋としての自分達の生きる道を模索していきたいと、渡辺様はお話されていました。
くまねこ堂様からの帰り道の電車では、ポケットから文庫本を出して読む方を複数人見かけました。
嬉しくなると同時に、出版社に勤める者として価値のあるものを届けていかなければならないこと、より自覚しました。
本日は古本屋くまねこ堂様への訪問から、古本や紙の本を巡る状況について考えてみました。
店主の渡辺様、貴重なお話をありがとうございました。
コトー
くまねこ堂様概要
社名:くまねこ堂
所在地
〒136-0076
東京都江東区南砂5-7-22 三光リビングビル1階代表者:渡辺 隆之様
連絡先
【買取のお問い合わせ】電話受付時間 9:00~23:00
フリーダイヤル(通話料無料):0120-54-4892
買取専用:03-6666-3628
買取直通(携帯):090-4594-3901
【店舗】TEL:03-6666-3627 FAX:03-6666-3627定休日:年中無休
URL
https://www.kumanekodou.com/
https://www.kumaneko-antique.com/
コメント